大阪地方裁判所 昭和35年(行)14号 判決 1960年12月23日
原告 株式会社山本工務店
被告 大阪府知事
訴訟代理人 今井文雄 外二名
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「被告が原告の従業員、山本勇、山本竜、山本真嵯子、大西清、山本儀三、今城誉富、山本章、木下清、岡安造、松中清、松中芳三、脇田広志、青山利行、原清詞に対する健康保険、厚生年金保険の被保険者資格確認を昭和三三年五月一日となした処分は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、
一、原告は、昭和三三年一月二一日土木建築事業を目的として設立された株式会社で常時五人以上の従業員を使用する健康保険、厚生年金保険の適用事業所であるが、健康保険法第八条、厚生年金保険法第二七条にもとずいて、同年七月一九日被告に対し、原告会社の従業員である請求の趣旨第一項記載の山本勇外一三名の被保険者資格取得届を提出したところ、被告は、同年五月一日に遡及して前記従業員が被保険者資格を取得したことを確認する旨の処分をなし、同年八月一八日同人らの被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書と被保険者証を原告に交付した。
二、しかしながら、右の確認処分は、つぎに述べる理由により、当然無効な行政処分である。
健康保険法第一三条、厚生年金保険法第九条は、当該保険の適用事業所に使用されている者は被保険者とする旨規定し、さらに、健康保険法第二一条の二、厚生年金保険法第一八条は、被保険者の資格取得は保険者の確認によつてその効力を生ずる旨規定している。つまり右各規定によれば、各保険適用事業所の従業員は、保険者の確認によつてはじめて、具体的に被保険者としての資格を取得し、以後現実に保険給付を受けうる地位が与えられると同時に、保険者に対しては保険料を支払うべき法律上の効果が発生するのであつて、右保険者の確認処分は、いわゆる法律行為的、形成的行政行為である。しかるに、右確認処分はそれぞれ健康保険法第八条、厚生年金保険法第二七条による事業主の届出にもとずくことになつているから、保険者はあくまで右事業主の届出の日時を基準として確認処分をなすべきであり、右日時より遡及して確認処分をなすことは明らかに許されない。
のみならず、本件のように右届出の日時より遡及して確認処分をなす場合には、その遡及期間中の事故に対して保険給付をなしえないのであるから、右のごとき確認処分は、不能を内容とする行政行為として当然無効なものである。なんとなれば、一般に保険というものは、いずれの保険においても、将来発生することあるべき一定の事故について、保険者が保険契約者、被保険者または保険金受取人に対し一定の給付をすることを目的とするものであるところ、健康保険、厚生年金保険においても同じであつて、前記保険者の確認処分は、あたかも生命保険、損害保険等における契約締結と同一視すべきものであるから、保険者は被保険者に対して、右確認処分以後の事故に対してのみ保険給付をなすべき義務を有するに止まり、したがつて、右確認処分以前における保険給付はありえない理である。
そればかりでなく、健康保険法施行規則第四五条によれば、「被保険者は法第四三条第三項の規定により同条同項各号に掲ぐる病院又は診療所に就き療養の給付を受けんとするときは被保険者証又は健康保険継続療養証書を当該保険医療機関等に提出すべき」ことになつているのに、その被保険者証は、保険者の確認がなければ交付を受けることができないのであるから、いまだ被保険者証の交付を受けない前記事業主の届出日時以前においては、被保険者として保険給付を受けることはできないわけであり、この点からしても、右届出日時より遡及する期間における保険給付は不能であるといわなければならない。
このように、遡及期間における保険給付は不可能であるにもかかわらず、保険者が事業主の届出日時より遡及して確認処分をなした場合においても、歳入徴収官は右遡及期間の保険料を遡及賦課処分をなすのであつて、かかる事態が保険の精神に反し、不当な結果であることは明白である。
三、以上、被告が前記従業員一四名の被保険者資格取得の日時を、前記原告の届出日時たる昭和三三年七月一九日より遡及し、同年五月一日となした確認処分は無効であること明らかであるから(右確認の日時は原告が被保険者証等の交付を受けた同年八月一八日の月の初めである同月一日とすべきである)、その確認を求めるため、本訴請求に及んだ。
と述べ、
被告の答弁に対し、昭和三三年五月一日当時、請求の趣旨第一項記載の山本勇外一三名の従業員を原告において使用していたことは認める。その他原告の主張に反する被告の主張はすべて争う。なお被告は、事業主の届出日時より遡及した期間内に保険事故が発生した場合でも保険給付はなされ、保険給付と被保険者証とは関係がないと主張する一方、被保険者証がなければ健康保険法所定の療養の給付は受けることができない旨さきの主張と全く相反する主張をなしているが、健康保険法上療養給付を受けえない被保険者ということは想像できない。被告は、健康保険法第四四条、第五九条の二により、療養の給付に代え、療養費が支給されることになるから、結局右遡及期間についても保険給付が行われると主張するけれども、前記各規定は遡及給付に関する規定ではなく、健康保険法、厚生年金保険法において他にいわゆる遡及給付に関する規定は見当らない。と附陳した。
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、原告主張事実中、原告主張の確認処分の相手方および被保険者証の交付先は、請求の趣旨第一項記載の山本勇外一三名の被保険者であると主張する外一、の事実はすべて認めるが、二、三の事実は争う。被告のなした本件確認処分は、無効でないのはもちろん、いささかの違法もない。すなわち、
一、確認処分の性質
(1) 健康保険法および厚生年金保険法においては、健康保険法第一三条および厚生年金保険法第六条第一項所定の事業所は、いわゆる同保険の強制適用事業であり、このよう事業所に使用せられるものは、被用のときより、当然に政府との間に保険関係が成立する(健康保険法第一七条、厚生年金保険法第一三条)。しかしながら、この被保険者の資格は、保険者の確認があるまでは、潜在的ないしは抽象的なものに止まり、保険給付の支給、保険料の徴収、支払といつた具体的な法律効果は、確認行為によつてはじめてその力を発生する(健康保険法第二一条の二第一項、厚生年金保険法第一八条第一項)。このことは、あたかも所得税法ないし法人税法において、歴年ないしは事業年度の経過により法律上当然に抽象的租税債権債務関係が発生し、それが申告、更正決定または課税決定により具体的租税債権債務関係に転化するのと同様である。
(2) このように、前記各保険にいう確認とは、保険関係に関し、公の権威をもつてその存否、正否を確定する行為であり、既存の事実または法律関係の判断の表示である。もつとも、このような確認により、前述のとおり、潜在的ないし抽象的保険関係が具体的な保険関係に転化するという一種の形成的効果をもつことは否定できないところだが、確認行為自体には、そのような形成的効果を目的とする効果意思が存在するわけではなく、法の与えた効果であるに過ぎない。
(3) 前記各保険関係の成立は、法定の事由に該当することによつて当然生ずるものであるが、その関係につき、確認の制度を設けたのは、つぎの理由による。すなわち、保険給付の請求、保険料の徴収等に関して紛争が生じた場合に、適正な裁定を行い、よつて被保険者の保護と保険給付の正確を期する目的のため、公の権威による確認行為によつて、保険関係の得喪について法定の確定力を付与し、その後紛争が生じたようなときには、この確認によつて確定した事実を基礎として解決を図るべきものとしたのである。
(4) このように、健康保険法および厚生年金保険法における、保険者の確認は、当該保険関係を形成するものではなく、その存否を確定するものであるから、その法律効果の発生の時期は、右確認行為によつて認定した時点によるのであり、確認を行つた日によるものではない。
二、原告は、「保険者は、事業主の届出の日時を基準として確認処分をなすべきであり、右日時より遡及して確認処分をなすことは許されない」旨主張するが、これは確認をもつて形成的処分とする誤解から生じたもので、もとより失当である。なお右確認処分は、被保険者の請求により、または行政庁自身の職権の発動によつてもこれを行うことができる(健康保険法第二一条の二第四項、厚生年金保険法第一八条第二項)のであつて、原告主張のように、必ずしも事業主の届出の日を基準としなければならない理由はない。
三、原告はまた、「保険者の確認は、生命保険、損害保険等における契約締結と同一視すべきものであるから、保険者は、被保険者に対して、右確認以後の事故に対してのみ保険給付をなすべき義務を有するに止まり、それ以前の保険給付はありえない」旨主張するが、健康保険および厚生年金保険等のいわゆる社会保険は、商法の規定による生命保険、損害保険のように、各人の意思にもとずく自由な契約により保険関係が成立するとは異り、法定の事由(適用事業に使用せられるにいたつたときなど)により、当然に保険関係が成立し、この保険関係は、保険者の確認により、確認せられた日以降具体的な保険関係が生ずるのである。原告はさらに、被保険者証がなくては保険給付を受けえないというが、被保険者証がない場合でも、具体的保険関係が成立した後は、確認処分が行われた日以前であつても、保険者が保険関係が発生した日と確認した日、すなわち本件においては、昭和三三年五月一日以降に、被保険者につき、保険事故が生じていれば、保険給付はなさるのであつて、被保険者の受給権は、被保険者証の有無とは関係がない。もつとも被保険者証がなければ、健康保険法所定の療養の給付(現物給付)を受けることはできないが、同法第四四条、第五九条の二により、療養の給付に代え療養費が支給されることになるだけで、原告主張のいわゆる遡及期間についても、保険給付はおこなわれるわけである。原告が、「遡及した日時の確認は、その間の保険事故に対してなんらの保険給与も行いえなものだから、無効の処分である」旨主張するのは、法の解釈を誤つたものである。
四、原告は、みずから主張するとおり、健康保険法第一三条第一号(ヲ)および厚生年金保険法第六条第一項第一号ロに該当する適用事業所であり、昭和三三年五月一日においては、請求の趣旨第一項記載の山本勇外一三名が使用されていたから、被告は、同日において前記山本勇外一三名が被保険者の資格を取得したことを確認したのであつて、同確認処分になんらとがめられるべき点はない。
と述べた。
(立証省略)
理由
一、原告は、昭和三三年一月二一日土木建築事業を目的として設立された株式会社で、常時五人以上の従業員を使用する健康保険および厚生年金保険の適用事務所であるが、健康保険法第八条、厚生年金保険法第二七条にもとずいて、同年七月一九日被告に対し、原告の従業員である請求の趣旨第一項記載の山本勇外一三名の被保険者資格取得届を提出したところ、被告は、同年五月一日に前記従業員らが前記各保険における被保険者の資格を取得したことを確認する旨の処分をなし、同年八月一八日同人らの被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書と被保険者証を原告に交付したことは当事者間に争いがない(もつとも被告は、右確認処分の相手方および被保険者証の交付先は前記従業員らである旨主張しているが、右主張は、前記通知書と被保険者証が、とりあえず、原告に交付されたことまで否認する趣旨とは認められない)。
二、被告は、本件確認処分の相手方は前記従業員らであつて原告ではない旨主張するので、その点について考えてみる。
本件確認処分が、被保険者たる前記従業員らに関し、同人らの被保険者資格取得の事実を確定するものであり、同人らを処分の相手方としていることは疑いないが、同人らを使用する事業主たる原告も、同処分により具体的に発生する保険関係につき、被保険者とともに、その保険料の一部を負担すべき義務を負うわけであるから(健康保険法第七二条、厚生年金保険法第八二条)、同処分は、単に被保険者に対してのみでなく、原告に対する関係においてもその効果を生ずべきものとして行われたと解するのが相当である。
したがつて、原告もまた、本件確認処分の相手方であるばかりでなく、その被保険者資格取得日時の如何は、原告の保険料支払義務に関して、原告にとり、具体的な利害関係を持つことも明らかであるから、原告は本件確認処分の無効確認を訴求すべき正当な適格を有するものというべきである。
三、原告は、原告の前記届出日時より遡及してなされた本件確認処分は、当該法律の各規定の趣旨に照らし、あるいはその遡及期間内に生じた保険事故に対して保険給付が不能である旨をもつて、当然に無効であると主張するので、判断する。
(一) まず原告は、健康保険法および厚生年金保険法の各規定によれば、被保険者の資格取得の日時は、それぞれ健康保険法第八条、厚生年金保険法第二七条による事業主の届出にもとずくことになつているから、あくまで同日時を基準として確認を行うべきであつて、同日時より遡及して確認を行うことは許されない旨主張する。
おもうに、健康保険法および厚生年金保険法は、労働者およびその被扶養者または遺族の生活の安定を図り、福祉の向上に寄与することを目的とし、被保険者もしくはその被扶養者の疾病、負傷等法所定の不慮の事故に対し、あるいは被保険者の老令、廃疾、死亡、脱退等に対して保険給付を行うことを内容とするものであつて、それぞれ法所定(健康保険法第一三条、厚生年金保険法第六条)の事業所に使用される者は、当事者の意思の如何にかかわらず、当然に当該保険の被保険者となるものである(いわゆる強制加入保険)。
このことは、前記各法律が、前記法所定の事業所に使用される者は、その業務に使用されるに至つた日にその被保険者資格を取得することとし(健康保険法第一七条、厚生年金保険法第一三条第一項)、その事業主に対しては、右被保険者資格取得の日より五日以内にその旨を保険者に届け出るべきことを義務付け(健康保険法第八条、同施行規則第一〇条第一項、厚生年金保険法第二七条、同施行規則第一五条第一項)、右届出を怠つた事業主に対しては刑事上の処罰を受けるものとし(健康保険法第八七条第一号、厚生年金保険法第一〇二条一号)、保険料その他法所定の徴収金の滞納に対し、延滞金の加算、滞納処分あるいは刑事上の制裁等による強制徴収の手段を認めている(健康保険法第一一条、同条の二、第八七条四号、厚生年金保険法第八六条、第八七条、第一〇二条三号)等の事実に徴しても明らかである。
なお、健康保険法第二一条の二および厚生年金保険法第一八条は、各保険者の被保険者の資格取得は、保険者の確認によりその効力を生ずる旨規定するので、その趣旨について案ずるに、前記各保険の被保険者の資格取得の日時つまり保険関係の成立の日は、前顕法条に明示するとおり、被保険者が法所定の事業所に使用されるに至つた日であるが、一方保険者において右被保険者の資格取得の事実を了知しない限り、被保険者の存在自体すら不明であり、従つて、保険給付の支給あるいは保険料の徴収といつた具体的な保険関係も生ずるに由ないわけであるところ、また社会保険である前記各保険においては、一般私法上の保険におけるように、あらかじめ契約によつて具体的保険関係の詳細について約定するものではないから、結局保険者が被保険者を使用する事業主からの報告または届出により、あるいは被保険者自身からの請求により、場合によつてはみずからの職権により(健康保険法第二一条の二第四項、厚生年金保険法第一八条第二項)、被保険者の資格取得の存否ならびに日時を確認し、あわせて具体的保険関係に必要な標準報酬額その他の事項の確定を行い、以後具体的な法律関係が発生するとしたものと解せられる。
原告は、右保険者の確認処分によつてはじめて保険関係が形成される旨の主張をしているものと解せられるが、なるほど、具体的な保険関係は確認によつてはじめて発生するに至るものであることは、前説示のとおりであるが、保険関係そのものの成立が確認により形成されるものと認めるべきなんらの成文上の根拠は見当らない。のみならず、もし原告主張のとおり確認の性質を解するならば、事業主自身の怠慢で被保険者資格取得の届出をなさずまたは遅延することによつて、保険者の確認がなされずまたは遅延した場合、その間の保険事故に対して、被保険者ら受給権利者が保険給付を受けえない結果となり、これが健康保険および厚生年金保険の精神を没却し、被保険者らの権利を阻害するのは明らかで、その不当なること言をまたない。
そこで、原告の前記主張についてみるに、既に述べたとおり、前記各保険の保険者の確認処分は、必ずしも事業主の届出によることを要しないのであるから、事業主の届出を右確認処分の唯一の根拠であるがごとく主張する原告の云い分は当らない。そして確認処分の趣旨が前記説示のとおりである以上、被保険者資格取得の日時は、被保険者が法所定の事業所に使用されるに至つた日を確認すべきであつて、事業主の届出日より遡及して確認してはならないとする原告の前記主張は理由がない(けだし原告主張のとおりとすれば、被保険者の資格取得は、事業主の届出の如何によつて左右され、届出の懈怠には罰則の定めがあるにしても、事業主の恣意により被保険者の権利を害することを許す結果となり、社会保険たる前記各保険の趣旨に反すること明白である)。
(二) つぎに、原告は、事業主の届出日時より遡及して確認処分をなす場合には、その遡及期間中の保険事故に対して保険給付をなしえないのであるから、右のごとき確認処分は、不能を内容とする行政行為で当然に無効なものと主張する。
そしてまず、右確認処分は生命保険、損害保険等における契約締結と同一視すべきものであるから、保険者は被保険者に対して、右確認処分以後の事故に対してのみ保険給付をなすべき義務を有するに止まり、それ以前の保険給付はありえないというのであるが、健康保険および厚生年金保険における保険者の確認処分の性質は、前記説示のとおりであつて、これを一般私法上の保険契約締結と同一視する原告の主張は、全く独自の見解であつて採るに足らない。しかも、確認処分が行われた日以前の保険事故に対する保険給付の有無について検討してみるも、まず健康保険についてみれば、同保険における保険給付は原則としては療養の給付(現物給付)を予定しているのであるが、前叙のごとき場合は、いまだ具体的保険関係が成立していない例外の場合であるから、その効果としての療養の給付が受けられないのはけだし当然のことであつて、右確認処分が行われた後は、健康保険法第四四条により、療養の給付をなすことが困難な場合として、既に被保険者が当該保険事故に対して支出した費用について、療養の給付に代え、療養費が支給されることによつて保険給付を受けうるのであり(被扶養者については、健康保険法第五九条の二により、前顕法第四四条が準用されて同様)、厚生年金保険についてみれば、厚生年金保険法所定の保険給付は、老令年金、障害年金および障害手当金、遺族年金、脱退手当金であつて、いずれも現金給付であり、被保険者資格取得後確認処分を行つた日までに生じた保険事故に対して支給され、かつ右期間も年金額算定の際に参酌されることになるわけであるから、いずれも、原告主張のように、いわゆる遡及期間内の保険事故に対する保険給付が不能ということはありえない。
さらに、原告は確認処分以前には被保険者証の交付を受けることができないので、その間保険給付を受けえない旨をもつて争うが、この場合、原告のいう保険給付は、療養の給付を指しているものと考えられるところ、前項健康保険に関し述べたところと同様な理由により失当である。
(三) 原告は、また、いわゆる遡及期間における保険給付が不能であるのに、同期間における保険料を賦課徴収することの不当をいうが、いわゆる遡及期間における保険給付が可能であること前記説示のとおりであるから、もとよりその主張は理由がない。
四、以上、原告の主張はいずれもその理由がなく、原告が健康保険および厚生年金保険の適用事業所で、昭和三三年五月一日当時においては、請求の趣旨第一項記載の山本勇外一三名が使用されていたことは、原告の自認するところであるから、同日をもつて前記従業員らが前記各保険の被保険者の資格を取得した旨保険者として確認した被告の処分は全く正当であり、原告の本訴請求は失当であるので、これを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 小野田常太郎 阪井いく朗 浜田武律)
表
行政事件裁判例集 第十一巻 正誤表
号数
ページ
箇所
誤
正
七号
一八七〇
一二行目
交付して
交付した
十号
二九一九
一一行目
解すべきである。
解すべきでない。